~本当の悪意は音もなく忍び寄る~『ファニーゲームU.S.A』

はじめまして!インターン生の上村静佳です。

皆さん、映画はお好きですか?
一口に映画と言ってもたくさんジャンルがありますよね。コメディや恋愛もの、はたまたサスペンスやホラー、SF…など様々な分野から多種多様な作品が日々世に生み出されています。
今回は筆者が隠れたおすすめの映画を皆さんにジャンル1作毎、計5回に分け、紹介していきたいと思います!

第4回目となる今回のテーマは【ドラマ】。
今回は趣旨を少し変え、おすすめ、というよりも是非挑戦して欲しい、という少し意地悪な気持ちで作品をご紹介します。
取り上げる映画は『ファニーゲームU.S.A』です。
監督は『ピアニスト』『愛・アムール』などの作品で知られるドイツ出身の鬼才ミヒャエル・ハネケ。
彼は人間の奥底に眠る野生的な側面や心理に迫った作品を多く手掛け、日常と非日常の境を融解しつつ見る者の不安をじわじわと煽るような作風に定評があります。
この作品ではそんな彼の手腕が余すことなく振るわれています。

物語の冒頭、別荘で夏季休暇を過ごしている3人家族の元に2人の青年がやってきます。
青年たちはお隣さんの使いだと名乗り、卵を分けて欲しいと奥さんに頼みました。
しかし青年はもらった卵を全て落としてしまい、それにも関わらずまた卵を貰い直したいと言うのです。
貰っては落とし、貰っては落とし……その行為を不自然に何度も繰り返され、とうとう旦那は苛立って青年を平手打ちしてしまいます。
その瞬間2人はしおらしい態度から一転、暴力的な態度を現し、家族まとめて監禁した後に彼らの生き残りをかけたゲームを開き始めたのですーーー。

この作品の特徴は一言で言えば“徹底された不快感”です。
冒頭、別荘へと移動する車の中でクラシックを流していた妻が、突然デスメタルを流し始め、そこでタイトルクレジットがどんと表示されます。この演出を始めとし、全編音が抑えめな中で突然デスメタルの大音量が流れたり、先ほどの青年が卵を割ったり貰ったりを繰り返す場面であったり、また、ある場面では不自然なほどに衣装や小道具が白で統一されていたり、家族が抵抗も出来ずに完膚なきまでに青年たちに蹂躙されてしまうなど、作中では見ている方がよっしゃ!となるシーンはほとんどないです。ないです。言葉を選ばなければ、終始イライラする度合いの方が圧倒的に高いです。
それもそのはず、監督はこちら側にイライラしてもらう為にこの作品を制作したので、見事に我々は彼の術中にハマっているとも言えます。

その不快感の象徴である2人の青年は全身白い服で身を包み、いつでもどこでも白の手袋を装着しています。その上に人を食ったような掴み所のない物言いで家族をおちょくり、なんの躊躇いもなく彼らを痛めつけ、家族を精神的にも肉体的にもじわじわと消耗させてゆきます。それこそ自らが死を懇願するほどに。
それだけでも十分外道っぽさがプンプンしているのですが、彼らはさらに、メタ的な役割も担っています。
例えば青年は家族にゲームを持ちかける際に、画面の方を向いて、「皆さんは彼らが(この生き残りに)勝てると思います?」とこちら側に疑問を投げかけて来ます。まるで観客もそれを楽しむ共犯だとでも言うように。そういった意味ありげに視線を観客に投げるカットも要所要所に挟まれています。
さらに終盤にはその演出をも上回る、これっていいのか?と思うくらい理不尽な場面も挿入され、観客も家族と同じように精神耐久戦を強いられます。
アニメやゲームで言うなら、“主人公補正が敵側に全振りされている”状態で、この世界は青年たちにばかり都合のいい場所なのです。

純粋で圧倒的な暴力。
作品であえてそこを偏執なまでに描いた理由として、現代の人々の“意識の薄さ”が挙げられます。
人は口では暴力はダメなんだよと言いつつも、フィクションである=自分には関係のない事象だと知ると、途端にその感覚は麻痺し、むしろその行為を肯定していってしまいます。
アクション映画などで主人公たちが敵を倒してゆくシーンを見て、そういうの良くないよ…..とモヤモヤする人は恐らくあまりいないでしょう。
暴力の程度はありますが、みんなそれを承知で来てるのですから。逆に楽しみにしていたはずです。
そんなように暴力が娯楽として消費される文化に対しての一種の皮肉めいたものを監督はこの作品で投げかけているのだと思います。
大抵フィクションにおいて暴力という行為にはそれを肯定するための理由づけがあると思いますが、もしかしたら本当のそれは理不尽で唐突にやってくるものであるのかもしれません。

我々はあれはあれ、これはこれ、と都合よく仕切りを作り、圧倒的に人を傷つけるその行為を画面の向こうで容認し、楽しんでいます。
しかし、仮に暴力という行為のなくなった映画しか世に出ないことがあったとしたら、それにもの足りなさを覚えてしまうだろうことも十分に考えられます。(少なくともアクション映画というジャンルは潰える)
そこが我々人間の業の深さでもあり、性なのだと思います。所詮綺麗事を並べても犠牲の上に成り立つ世界でしか生きられない生き物なのです。
しかしそれでも意識を変えていこうと考えることは無駄にはなりません。
この作品は私たち人間にとって暴力とはなんなのか、を改めて考える良い機会になるのではないでしょうか。

【著者の一口コメント】
暴力をテーマにこの作品は作られましたが、見ていて気づいたのは作中で直接的なバイオレンスシーンがあまり登場しないこと。
その行為を行なっているであろう音や声だけを聞かせ、観客はまさに行われている瞬間を見ることは出来ません。
直接的なグロさは薄い分、この“見せなさ”が逆に恐怖を煽り、過程を見せるのではなく、ただ事実としてそこに横たわっている状態を映すことで無情感や神出鬼没さを残酷なまでにハッキリと突きつけているのです。

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