「誰もが知っている『走れメロス』」
こんにちは。インターンシップ参加者の、守屋芽生(もりやめい)と申します。
今回は、『走れメロス』を紹介したいと思います。
こちらは、前回の記事でも軽く触れましたね。
それでは、少しだけ、関係ない話をします。
皆さんは、学習指導要領というものをご存知でしょうか?
文部科学省のHPをご覧いただければ細かいことがお分かりになるかと思いますが、誰にでも分かるように言えば、授業を作るときの基準になるものです。
こういう人間に育ってほしい。では、そうなるためにはどんな教育をすればいいんだろう。そこで作られるのが学習指導要領です。これは教育者だけでなく、精神科医や評論家なども関わって作られています。ということは、多角的な視点で見て、子供に悪影響を与えないものが授業に使われるわけです。
このことから、よく教科書に載っている『走れメロス』が少なくとも教育に悪いものではない、というのがお分かりになるかと思います。
どうしてこんなに正当性を説こうとするのかというと、前回「書かせて」申し上げたいただいた通り、太宰についての固定観念を壊したいからです。
遅くなりましたが、本題に入ります。
ところでこの作品、元ネタがあるというのは知っていらっしゃいますでしょうか。
作品を読むと、最後に「古伝説と、シルレルの詩から。」とあります。これは古代ギリシャの伝承と、シルレル、すなわちフリードリヒ・フォン・シラーが書いた『人質』という詩を基にしているということです。
分かりやすいところを挙げれば、「王への陰謀を企んで死刑になった主人公が友人を人質にし、陽が沈むころに戻ってくる」、そして「邪知暴虐な王が2人の友情に胸を打たれて、友情に加わりたいと頼む」、という大まかな物語の設定ですね。元の伝承では、王はその頼みを拒否されてしまうのですが……。
それなら、『走れメロス』は、いわゆる「パクリ」なのか? というと、そういうわけではありません。
この作品の結末は皆さんご存知だと思いますので、以下に載せてしまいます。
どっと群衆の間に、歓声が起こった。
「万歳、王様万歳。」
ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、ひどく赤面した。
ここが、他の作品にない、太宰のオリジナル要素です。
他にもたくさんありますが、今回はこれを取り上げさせていただきました。王道な友情を描くストーリーと、ユーモア。これを感じることができれば、太宰のイメージが少し変わるのではないでしょうか。
今回は『走れメロス』について書かせて頂きました。
次回は名紀行文、『津軽』についてお話しします。
ご覧いただき、ありがとうございました。
引用…太宰治「走れメロス」角川文庫 平成26年5月10日 改版7版
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