将来のXR分野の発展
前回まで、軍事・防災分野と続けてXR技術の活用例について説明していきました。今回はガラッと変わっ
て、動画配信サービス分野での活用例について説明していきたいと思います。
VRとは、ご存知だとは思いますが、「Virtual Reality」の略称で、日本語にすると「仮想現実」と言う意味で
す。仮想現実を体験する方法は目を覆う大きなゴーグルを装着して、視界の全方位を占める映像がゴーグルに映
し出されます。想像しやすい例として動画のリンクを貼っておきますが、動画内でジェットコースターに乗って
いる乗客視点の映像が映し出されており、本当にジェットコースターに乗っているような大迫力のスリルを味わ
えそうです。実際に活用されている例を2点挙げて、動画のリンクも貼っておきます。
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的として、政府が大規模イベントの自粛要請を行い、各所でライブイ
ベントが中止となる中、2019年3月、HIP HOPアーティスト「AK-69」が行った日本武道館での単独公演にて、
VRマルチアングルの生配信が行われました。HIP HOPアーティストが日本武道館で行ったライブを、VRで生配
信する取り組みは初めてのことでした。アングルは、客席に設けられた「アリーナ中央」「アリーナ後方」さら
に「ステージ前」「ステージ後方」の4つが用意されています。武道館の客席にいるような感覚で、現地と同じ
時間にライブを楽しめるだけでなく、現地では見られない「最前列より前の視点」、「ステージ前からの景色」
を楽しむことができます。無観客となった状況を逆手取り、VRに特化したステージングが可能になったことか
ら、普段とは違うライブ空間を提供していました。
前者のように既存のコンテンツにおける体験を広げる目的で活用されることの多いVRですが、それだけでな
く、VRを新たな表現技法として活用した、ストーリー性のある映像作品も世界各国で制作されています。全世
界で行われている映画祭でも、VR作品が取り上げられており、「世界3大映画祭」の内、カンヌ国際映画祭と
ベネツィア国際映画祭ではVRの部門が設けられています。この内、ベネツィア国際映画祭には、日本からフル
CG作品「Feather」が出品され、VR部門「Venice Virtual Reality」にてプレミア上映されました。作品のあらす
じは大体以下の通りです。Featherは小さな人形の少女がバレエダンサーになる夢を目指す物語です。古い屋根
裏部屋にひっそりと置かれているドールハウスの中で、ストーリーは繰り広げられます。Featherとは「勇気」
や「励まし」の意味を内包するシンボルです。白くて軽くて、フワッとした羽の形をしています。少女が何らか
の壁にぶつかった時、体験者の元にFeatherが現れます。体験者は少女を見守るだけでなく、Featherを掴んで少
女に手渡すことで、インタラクティブに作品の世界と関わることができます。そして、少女はFeatherを受け取
りながら、スクスクと成長していき、バレエダンサーになる夢へと突き進んでいきます。動画を見てもらうと、
作品に入り込めるインタラクティブ性があることが特徴で、体験者の行動により、ストーリーが進んでいくとい
う演出が没入感をさらに高めています。5G時代の本格到来により、コンテンツホルダーにとっては「没入感」
をキーワードとした、保有するコンテンツの魅力を活用した更なる展開が期待できるようになるのではないで
しょうか。
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